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大学進学を考える ~その1~

大学に進学することは必要か不要か

2026年現在、高卒者の4年制大学進学率が62.3%と、ほぼ3人に2人がいわゆる大学生になっています。この大学進学があたりまえになりつつある昨今、改めて大学進学を考えてみたいと思います。


1980年代には大学進学率は30%程度であったものが、1990年代から急激に上昇し、2000年代半ばに50%を超えました。この要因としてあげられるのが少子化です。大学の数や定員数に大きな変化が見られない中、受験者の母数となる18歳年齢が減少しているのですから、単純に分母が小さくなっているのです。当然、その分数の値は大きくなり、それは進学率そのものですから、進学率が上昇するのは当たり前といえます。このことは、戦後間もない頃中卒で仕事に就くことが普通の時代から、高卒が多数を占める時代となった変化と同様に、今後大卒が一般的な最終学歴へと変わっていく可能性を示しています。


ところが、そんな現状は維持されるのかという疑問が出てきています。それは、大学の消滅です。地方の大学では、少子化の影響で募集定員に満たない受験者数が長年続いたことで募集を停止し廃校を決断するということが起きています。ある専門家は、今後10年で100の大学が消滅すると予想しています。そう考えると、先ほどの進学率を示す分数の分子が減るのですから、進学率は維持もしくは低下すると考える人もいるでしょう。しかしながら、それは違います。廃校する大学の受験者数は定員に満たない受験者数、つまり微々たる数ということです。よって、進学者数を大きく減らすものではありません。むしろ、それ以上に少子化が進んでいますので、分母の縮小の方が大きいのです。なので、進学率は今後も上昇傾向となるのは明らかです。


このような中、大学に進学するということを2つの視点から考えてみたいと思います。


まず1つ目は、いわゆる「学歴」に対する評価です。これは、「就職」というワードから見てみるとわかりやすいのではないかと思います。その最もわかりやすい例が、公務員採用です。

近年は「公務員離れ」が進んでいますが、そもそも公務員の人気は景気に左右され、バブル崩壊以降の公務員人気はうなぎのぼりでした。現在は実感できるかどうかはともかく、株価の上昇をはじめ景気は上向きですから、公務員の人気はさほどではないというところです。国家公務員は学歴による採用枠そのものがないため、年齢制限による採用枠の違いが存在しますが、総合職(旧一種)の採用は大学生で占められています。それでは高卒者はどうでしょうか。事務系の国家公務員採用において、高卒者程度の採用枠は1990年以降縮小しています。これは、行政の高度化・専門化に伴う変更とされていますが、それとともに大学進学率に呼応するように高卒者の採用枠は減っています。一方、地方公務員も事務系の採用者数は都市部になればなるほど大卒者の採用枠が拡大し、高卒は縮小しています。ある都市では、1980年代大卒者と高卒者の採用者数はほぼ1:1であったのが、2025年度採用者数では4:1と圧倒的に大卒者の採用数が拡大されました。そのため高卒者の採用倍率が1990~2000年代に一度30倍を超え、難関採用試験となり、それを知ってか志望者が減少、2025年現在では平均7倍程度になっています。大卒者の採用倍率は、1990~2000年代に2倍程度まで低下しましたが、現在は平均5倍程度になっています。

事務系以外特に公安系(警察・消防など)は、高卒者の採用枠に大きな変化がないため、倍率は安定的ではあります。このため、「高卒なら警察や消防、大卒は事務系」のような傾向があり、採用試験における学歴の影響は明確になってきています。


民間企業は、いわゆる大企業の採用において、「現場」と呼ばれる採用では高卒者採用枠が多くあります。また、雇用が流動的になっている現代では、中小企業で培ったキャリアをバックボーンとした大企業への転職がよく見られます。民間企業の採用では、大卒のそれと比べて倍率が比較的高く、安定的に優秀な人材を得られることから今後も一定数の採用枠を設けていくものと考えます。また、即戦力となる中小企業からの転職も今後継続していくと予想されます。しかしながら、大企業の採用は圧倒的に大卒が多く、また特定の大学いわゆる「大学フィルター」が存在し、大学名を採用の一定基準にしている企業も少なくありません。事実ある企業では「エントリーは自由だけど、書類審査で大学名から落とすことは少なくない。」と人事部の人がその実情を明かすほど、偏差値の高い大学がその採用の中心になっているようです。学歴偏重時代からみるとそれなりに大学とらわれない採用が進んでいるといわれますが、それはかなり稀有な事例で、やはり有名大学や偏差値の高い大学に採用が偏る傾向に変わりはないようです。


しかし、採用されても問題がないわけではありません。日本の新卒採用者の3年以内の離職率は、高卒が38%程度、大卒が33%程度と高卒者の割合が高い状態が続いています。また、高卒者の離職は採用3~6か月以内が最も多く、その理由の多くは「待遇」中でも「労働内容」「労働時間」にあるようです。簡単にいうと「仕事が辛い」ということです。高校生活から見ると相対的に過酷な労働をすることになりますから、当然に辛いものでしょう。しかしそれ以上に、高卒者を採用する企業の体質が労働者を酷使する傾向つまり「ブラック」な体質の企業が多いようです。長時間労働、準備や片付けを理由とした無給労働時間の存在など、会社全体がそれを普通とする雰囲気にあると「おかしい」ことに気づけずただただ辛い労働を受け入れることになり、体調や精神に支障をきたして退職することも多いようです。また、社員教育においても、高卒者を採用する企業では、まだまだ古い体育会系の怒鳴りや叱責が常態化しているところも少なくありません。実際私の知っている企業では、お客様の前で新人社員を叱責する先輩の姿を見たことがあり、正直「続くのかな…」と思ってしまったことがあります。これは、昨今の社会とりわけ社員教育の変化についていけない会社に見られるものですが、それとともに社員教育に余裕のない中小企業に見られる傾向であり、経営陣の意識改革がなされない限り改善されることを期待することも難しいのではと考えます。


以上のように、就職という側面からみる大学進学は、高卒のそれと比較しても比較的優位にあるといえます。当然に給与についても、初任給はもちろん生涯賃金においても大卒者の方が優位であることは広く知られており、大学進学することのメリットは大きいといえるでしょう。


~次回は、この就職についてもう一つの観点からお話しします。~

 
 
 

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